卑小な科学者

摘要

わたくしはこの原稿を書いている時点で60歳にかぎりなく近づいているのに，科学者であることに悩んでいる．これからどうしたもんだろうと，思案している．不惑の年を20年も前に通過してこんなていたらくでは，情けないし困ったものだが，事実だからいたしかたない．ただし，これはあくまでも，わたくしのアイデンティティであるかもしれない科学者であることに起因する問題であって，わたくしが推しすすめている研究の内容自体についてではない．研究のほうにはありがたいことに必然の流れがあるので，それをつかんでいれば迷いはほとんどなく過ごせる．