NTP(Network Time Protocol)のようなIPネットワークを通じた時刻同期では,ラウンドトリップ時間(RTT)を測定し,その値に基づいて時刻オフセットを見積もる.この方法でRTTに含まれる遅延変動成分が見積り誤差の原因となる.そこで,RTTの測定値を最小値フィルタに入力し,遅延変動分を除去している.最小値フィルタにおいて,最小値選択に用いるサンプル数は,遅延変動除去の効果と,安定性やクロックの周波数偏差の点でトレードオフの関係があり,適切に決めるのは困難である.本稿は測定されたRTTのばらつきに応じてサンプル数を増減する適応最小値フィルタの時刻同期への応用を検討する.適応最小値フィルタを用いた場合の時刻精度を計算機シミュレーションにより評価し,従来手法と比較し,適応最小値フィルタが良い精度を与えることを示す.
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