大腸癌同時性多発性肝転移に対して肝動脈化学塞栓療法（TACE)を施行し奏効が得られている1例

摘要

大腸癌の同時性多発性肝転移に対して肝動脈化学塞栓療法（transarterialcliemoembolization:TACE)を施行し，良 好なquality of life (QOL)と奏効が得られている1例を経験したので報告する。症例は85歳，男性。主訴は血便であつた。 大腸内視鏡検査でS状結腸および直腸Raに腫瘍を認めた。さらに同時性肝転移を認めたが，年齢や手術侵襲などを考慮し 肝切除は行わず，腹腔鏡下Hartmann手術を施行した。肝転移巣に対する治療としてUFT-E内服を開始したが，有害事象 のため中止した。本人と相談の上，5-FU系抗癌剤を使用しない治療方法としてTACEを施行する方針とした。イリノテカ ン動注およびィリノテカンを含浸したへパスフィァ~R (日本化薬）を使用し，TACEを計8回施行した。その結果，TACE開 始前に認められた肝転移はすべて消失した。自験例のように全身化学療法力適さない症例には，TACEが有用である可能性力考えられた。