ラフ集合理論を利用したHLW地層処分に関する動向調査分析

摘要

高レベル放射性廃棄物(High-Level Radioactive Waste: HLW)の処分事業を安全かつ計画的に推進していくためには，HLWの地層処分についての社会的な合意形成が必要である．この合意形成を実現するためには，一般国民に対して，地層処分の安全性などの技術的な情報をわかりやすく効果的に提供していく必要がある．そして，そのような情報提供を効率的に推進していくためには，ステークホルダーの合意形成へ向かう意思決定の要因とプロセスをあらかじめ分析しておくことが重要となる．このような合意形成プロセスを分析する手段としては，比較的少人数で行うブレーンストーミングやインタビュー等によるアプローチと，多人数のモニタリングによるアプローチがあり，最終的には両者の分析結果を融合させていく必要がある．本研究では，後者のアプローチとして，モニタリングの対象者がエネルギー問題や原子力に対して持っている知識·関心·不安等がどのように，HLWの地層処分の合意形成プロセスに影響を与えているかを，ラフ集合を用いて分析した．ラフ集合に基づく解析手法は，多数の対象の評価や診断を示す決定表から，決定に必要な属性や簡潔なルールを抽出する手法である．決定表は，ある種の条件が満たされるとき，どのような決定がされるかを規定するもので，決定に関する問題のほとんどは決定表による定式化が可能である．近年，マーケティング分野で新製品開発のコンセプト設計にラフ集合が用いられ，消費者からより確実に選好されるコンセプト設計の実現に有効性が示されている．本論文では，このラフ集合の概念をHLW地層処分の合意形成プロセスの分析に適用する手法を提案する．