PFC回路におけるノイズスペクトルの時間変化に対する実験的考察

摘要

省エネルギーに対する要求の高まりから、高速スイッチング動作を用いて高効率の電力変換を行うパワーエレクトロニクス技術が幅広く用いられている。商用交流を直流に変換するAC-DC電力変換回路では、ダイオードブリッジ整流回路の後段にチョッパ方式のDC-DCコンバータを用いて入力電流波形ひずみの改善、低次高調波の抑制、および総合力率の向上が図られる［1］。一方で、コンバータ回路のさらなる小型化のために、SiCやGaNなどのワイドギャップパワー半導体デバイスによる高速スイッチング動作［2］を適用し、電流·電圧変化率（di／dt，dv／dt）を急峻にすると、回路構成要素が持つ寄生成分等の影響によるEMI（電磁妨害）ノイズの発生が顕著になる［3］。EMC（電磁環境両立性）を考慮した電力変換回路設計を行うためには、これに用いるEMIノイズの発生メカニズムの解明および発生源のモデル化が必要である。入力の電圧·電流が商用周波数で周期的に大きく変化するAC-DC電力変換回路では、単なるノイズの周波数スペクトル評価だけでなく、入力の周期性に対応して時間領域における評価をあわせて行うことがEMIノイズの発生メカニズムの解明に有用である［4］。本報告では昇圧型力率改善回路（PPC回路）を例に、リアルタイムスペクトラムアナライザ［5］を用いて雑音端子電圧の測定を行い、回路動作条件によって変化する高調波や伝導ノイズのふるまいについて考察する。