多重解像度解析を用いた静電気放電のEMI評価

摘要

静電気放電は，過渡的で高速の現象であり，電子システムの電磁障害要因となることが知られている．しかし，この現象にっいては，帯電物体の移動速度の有無が，その電磁干渉作用（EMI作用）レベルの変動要因になるといった，いまだ定量的に検証されていない特性を有している．本論文は，帯電物体の移動速度の有無が，静電気放電のEMI作用に与える変動特性の定量化を目的とし，実測した放電電流をもとに，その振幅値やエネルギーこ関する特性評価を行った．この際，充電電圧2kVと15kVの条件で単発の放電を発生させ，それに対して離散ウェーブレットによる多重解像度分解を用いて解像度スケール別に時間波形を分離#12539;解析した．その結果，放電間隙部が急激に移動した場合には，激しい振動成分が電流波形に重畳することが観測され，多重分解した際の高解像度スケール成分については，最大振幅値で1.2～7.6倍程度，エネルギー量で1.4～39倍程度増加傾向にあること等を確認した．得られた結果は，帯電物体が移動速度を有する場合には，とりわけ高周波領域における放電電流エネルギー量が増加し，EMIレベルが上昇する可能性があることを定量的に示す内容となった．