品川台場を築いた近代日本国家建設の祖: 江川太郎左衛門英龍

摘要

「貴殿の仰るょうな不完全な事業では竹の先に縄を張って品川の海に立てておくのも同様ではありませぬか！ 」ペリーが浦賀に現れた翌月の嘉永6年（1853）7月、勘定吟味役に登用されたばかりの江川太郎左衛門英龍は、上司である勘定奉行川路左衛門尉と品川台場築造について議論した際、奉行所中に響き渡るような大声で反駁しその大きな眼をさらに大きく見開いた（図1）。 いまの財務大臣にあたる勘定奉行に対する彼の態度は無礼ではあったが、彼の国を愛する心、誠実さ、熱烈さを感じさせられるエピソードであった。