低周波EMC：電源高調波問題とその対策回路

摘要

現在，情報·通信·家電機器を始めとする様々な電気電子機器の電源部には，小型·軽量かつ高効率化が図れることから，スイッチング電源が広く一般的に用いられている．これらスイッチング電源の多くに採用されているコンデンサインプット形整流回路は，機器の入力電流に高調波歪みを発生し電力系統に高調波障害をもたらすことから，低周波EMC 問題としてその対策が社会的課題となっている．スイッチング電源の高調波対策として，これまで種々の高調波抑制·力率改善回路が提案されているが，なかでも力率改善，出力電圧安定化及び絶縁の機能を1つのコンバータで実現するワンコンバータ方式は，部品点数が少なく，小型化が可能な方式として注目されている．ただし，ワンコンバータ方式の多くは，動作原理上，軽負荷時に1次側エネルギー蓄積用キャパシタの電圧が上昇する特性を有しており，トランス補助巻線の使用等により，キャパシタの電圧上昇を抑制する必要がある．しかしこのトランス補助巻線を用いた回路についても，入力電圧が低い期間においてはトランス補助巻線の誘起電圧により入力電流が流れず，結果として力率の低下を招くという問題点を有している．本稿では，トランス補助巻線を用いた高力率AC －DCコンバータとして，商用交流周期の全期間において入力電流が流れ，高力率·低高調波を実現する2種類の新しい回路を提案し諸特性の検討を行う．