昭和大学医学部教授就任にあたって - 臨床から病理学, そして解剖学へ

摘要

平成27年8月1日付けで，昭和大学医学部解剖学講座顕微解剖学部門の教授を拝命しました.この場をお借りして日本 解剖学会の皆様にご挨拶申し上げます.私は1984年に信州大学医学部を卒業後，虎の門病院病理部に入職し，原満病理部長（後に虎の門病院副院長）の下で6年間，病理解剖と外科病理学を学びました.原満先生は腎病理が専門で，当時新しく導入された蛍光抗体法と電子顕微鏡を駆使して腎生検診断法の確立に尽力されていました.それがきっかけで腎病理学に興味を持ち，一念発起し腎臓病の臨床を学ぶため，1990年から東京女子医大腎臓病総合医療セン ター内科に入局し，杉野信博?二瓶宏両名誉教授の下で12年間，内科臨床と腎不全治療の経験を積みました.その後東京女子医大第二病理学小田秀明教授に腎病理学を専門とした病理医として再出発することを勧められ，2002年に東京女子医大の第二病理学教室に移り，以後13年間，年間千例を超える自己腎や移植腎の生検診断を担当し，腎疾患の臨床病理学的研究を中心に動物モデルや培養細胞を用いた基礎研究なども行ってきました.また，腹膜透析の腹膜傷害の病理学的観察から中皮細胞の特殊性と腹膜再生への応用を研究課題にして参りました.この間2004?2006年の2年間，米国ヴァージニア大学のDepartment of Microbiologyに留学する機会を得て，マウス自然発症腎炎が抑制されるコンジェニックマウスの免疫調節因子（mnx3)の遺伝的免疫学的解析に従事しました.