人間の高次認知機能理解のためのACT-Rモデリング

摘要

近年の認知心理学，神経科学，人工知能などの発展に伴い，人間の脳機能を解明すべくさまざまな研究が行われている．本研究では，人間の高次認知機能解明の一助として，加算課題や数字列完成課題のモデル化を行った．実験手法として，ACT-Rの結果とfMRIのデータを比較することで問題解決プロセスの検証を行った．その結果，fMRIとACT-Rが一致して賦活を予測したほとんど部位において，双方の結果から算出した信号間に0.9以上の相関がみられた．また，ACT-Rの結果について詳細にプロセスを比較し，妥当な結果を得た．さらに，加算課題において男女間の個人差に着目した．ここでは問題解決プロセスに違いはみられなかったが，信号を形成するパラメータから，男性の方が大きく脳を使わずに計算を行っている可能性が示唆された．