スピン相関分光としての時間領域ESR

摘要

磁性物質を対象とした研究において電子スピン共鳴（ESR）法は有効な分光法であり，現在では基礎から応用分野まで多岐にわらたて活用されている1）．一方，ナノメートル空間でおこる科学が新しいパラダイムとなっている近年，高い精度でナノスケールを計測できる"ものさし"の出現が強く求められている．核に比べて質量の小さな電子の存在位置は，サブナノ空間に広がっている原子軌道や分子軌道（甲）で決まる確率的なものとなる（図1参照）?また，半整数スピン量子数（5＝1／2）をもつ電子の磁気モーメント　 山。 ）はプロトンなどの磁性核に比べて二桁以上も大きい．．これらの特徴から，二つの電子が数ナノメートル離れても数百〃T以上の磁気的相互作用がスピン間に働く．スピン間に働くこのような磁気的相関エネルギーは，ESR法で分光できる大きさである．すなわち，スピン相関エネルギーを測定できるESR法は良好なナノスケール"ものさし''となるポテンシャルを持っていることを意味する．