ディップコートにより単繊維上に形成した堆積型コロイド結晶の構造に繊維表面の性質が及ぼす影響

摘要

繊維製品の染色は，媒体に水を用いて染料を繊維へ吸着させることでなされ，大量の水資源とエネルギーを消費し，染料や助剤を含む大量の廃水を生み出す産業として成立している．また，染色された繊維製品は，染料が光暴露下で退色を引き起こし，その寿命に制限をもたらしている．一方で，繊維製品の審美性は染料および，布帛の設計を通して追求されてきたが，染色の長い歴史の中でそれらの限界に達してきていると考えられる．繊維製品に対する世界的な需要は年々増加しており，持続可能な社会を築き，繊維製品のさらなる審美性を追求するには，染料を使用しない新しい原理による繊維の着色技術の開発が望まれている．繊維製品の構造色による着色は，時に有害性が疑われる染料の使用および，大量の水資源の消費を回避する方法として，その開発が期待されている．また，構造色は発色する構造が維持される限り退色しないため，繊維製品の長寿命化に有効であると考えられている．構造色を有する繊維を調製するいくつかの研究が報告されている．