分光学における極限を探るⅥ．高輝度放射光を用いた微小領域のアナリシス: ナノエレクトロニクスからライフサイエンスまで

摘要

シンクロトロン放射光は波長可変性，高輝度性，偏光性，パルス性，など優れた特徴を持っている．1947年に米国のシンクロトロン加速器で初めて放射光が確認されてから半世紀以上が経過し，今や物質科学，生命科学の研究においてなくてはならないものになった．加速器に寄生していた第1世代から，放射光専用リングの第2世代に移って放射光研究は飛躍的な広がりを見せ，そして今，極めて小さな電子ビーム水平エミッタンス（10nm・rad以下）の第3世代放射光源が開発され　 高輝度放射光を使った最先端の研究が進められている．物質科学，生命科学においては，試料の構造をまず解明することが最優先課題である．そして電子状態，物性との相関を解明し，機能発現メカニズムを明らかにして，それを新しい物質合成，材料創製，素子開発にフィードバックしていく．波長0.2nm以下の硬X線を用いたDiffractionによって結晶の構造が解析され, 一方，真空紫外線や軟X線を用いたSpectroscopyでは主に結晶の電子状態が解析され，両者を併せて他の物性との相関が議論されている．