単語の発話音韻長と幼児の語彙獲得期間との関係

摘要

我々はこれまで，縦断データを使用し，いつどんな単語を覚えたかを多人数の幼児を対象に調べてきた．このデータから，幼児が単語を理解してから発話するまでの目数において，名詞は動詞より早く獲得することが分かってきた．我々は，これらの差が，動詞と名詞の文法的な役割の違いよって生じると考えている．しかし，これに対しては，使われている音韻の長さが異なることにより理解してから発話するまでの期間が異なるという可能性も否定できない．本報告では，この点を踏まえて，母親が書きとった幼児が語を初めて話した日齢とその発話のトランスクリプションをインターネットを使って収集し，単語中に含まれる音声特徴の数を求め，それがどの程度，理解から発話まで日数に影響を与えるかを評価した．この結果，音韻長と理解から発話までの日数の相関が尤も大きいが，その影響は，実際に観測される名詞と動詞の理解から発話までの期間に比べ小さく，音韻長がこの期間の差に対する支配的な要素ではないことが分かった．