モバイルサービスにおいては,電波環境に起因する通信路品質の劣化によってアプリケーションレベルの品質が低下すると,ユーザの満足度(効用)が著しく低下する.更には,複数ユーザが帯域?信号電力といったリソースを共有しているため,通信路品質の劣悪なユーザがリソースを非効率に利用することにより,全体の効用が劣化する.一方,ユーザを望ましい通信環境の位置に誘導するユーザ位置制御が提案されている.ユーザを良好な電波環境の位置に誘導することで上述の問題を解決できると考えられるが,従来のユーザ位置制御はトラヒック負荷分散や通信エリア外のユーザの救済を目的としていた.そこで,本論文では,電波環境に基づくユーザ位置制御を提案し,そのための制御機構も提案する.この制御機構においては,ユーザの移動によって得られる効用と移動させられることによって生じるユーザの不満度(コスト)を加味したサービス価値が重要となるが,これらの関係はこれまで定量化されていない.そこで,サービス価値の定量的モデルを提案し,主観評価実験によりその正当性を立証する.また,立証されたサービス価値のモデルの応用例として,無線LAN(Local Area Network)にユーザ位置制御を適用した場合の性能を評価する.
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