3D心電双極子逆推定問題について

摘要

心電図計測は，非侵襲且つ比較的容易に心臓の電気的活動を観測する手段として広く利用されている．本研究では，心臓の電気的活動を局在化する電流双極子のダイナミクスとしてとらえ，心電図の実測データから，心臓内の電流双極子の軌道及びモーメントを逆推定し，これらの時系列のカオス性について検討することを目的とする．具体的には，心臓内に仮定した局在化する電流双極子により生じる体表面電位を有限要素法を用いて計算し，計測された体表面電位と最も符合する双極子ベクトルを遺伝的アルゴリズムによって推定する．推定された双極子ベクトルの軌道及びモーメントの時系列についてLyapunov指数を求め，カオス性について検討する．本報告では，胸部形状を離散化した3次元メッシュを作成し，さらに，各要素ごとに心筋線維，支持組織などの導電率を個別に設定し，不均質で複雑な人体の電位解析を行った．実際に計測された124Chの体表面電位に対して本提案手法を適用し，逆推定された電流双極子の時空間的挙動のカオス性について検討した．