核磁気共鳴分光法（NMR）

摘要

核磁気共鳴（Nuclear Magnetic Resonance：NMR）は磁場中の試料に数MHz－数100MHzの電波（ラジオ波帯からUHF波帯に相当）を照射してスペクトルを観測する分光法である。 赤外分光法（IR）や紫外分光法（UV）などのほかの分光法に比較すると感度は低いが，スペクトルから得られる情報量が多いため，有機物の構造解析や定量測定などさまざまな分析に用いられている。 近年，NMRは装置や測定法の進歩により，測定の対象となる試料や得られる情報が増加し，応用の範囲が広がってきている。図－1に超伝導パルスFT-NMR装置の全景を示す。 本稿では，最初にNMRの基礎について溶液NMRを中心に解説し，応用の広がりについては試料形状の分類に沿って固形·粉末試料，半固体試料，混合物試料それぞれについて紹介する。