近年，音声から動画像までを含む種々のメディアを無線通信回線を介してエンド利用者に提供するマルチメディア無線通信サービスの要求が高まっている．これら要求を実現可能とする無線通信方式の一つとして，OFDM （Orthogonal Frequency Division Multiplexing）通信方式が注目されている．OFDM通信方式は，周波数の有効利用に優れ，またマルチパスフェージング環境化においても優れた誤り率特性を達成可能なことから，これまでに地上波ディジタルTV伝送システム，無線LAN，第3.9世代携帯電話システム（LTE）等の標準通信方式として採用されている．また，OFDM通信方式は，多元接続技術，符号化技術，環境適応技術，MIMO （Multi-input Multi-output）技術等との融合性に優れており，その結果大きなシナジー効果が得られる通信方式としても知られている．OFDM通信方式は，これら優れた特徴より有線，無線通信を問わず幅広い通信分野で今後ますます発展することが期待されている．本稿では，先ずOFDM通信方式の基本原理について概説し，OFDM通信方式で未だ残された課題となっている，高精度受信同期，PAPR （Peak to Averaged Power Ratio），移動通信回線下におけるドップラー変動問題を取り上げ、これら課題を解決する応用技術について紹介する．
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