システムスループット観測値に基づく周波数ブロック毎適応送信ON/OFF制御法のユーザ移動を考慮した特性評価

摘要

本稿では，小型低出力のピコ基地局をマクロセル内にオーバレイ配置するヘテロジーニアスネットワークにおいて,筆者らが先に提案したシステムスループット観測値に基づきシステム帯域幅を分割した周波数ブロック毎に各ピコ基地局の送信ON/OFFを確率的に制御する方法について，ユーザが動的移動する環境での特性を評価する.提案ON/OFF制御法では，基地局間の情報交換で共有されたネットワークレベルでのシステムスループット値の時間変動とその間の各ピコ基地局のON/OFF状態の遷移結果に基づいて，各ピコ基地局は独立に、時々刻々と送信ONとする周波数ブロック数とどの周波数ブロックを送信ONとするかの制御を確率的に繰り返し行う.基地局およびユーザのシステムカバレッジ内の分布に適応した送信ON/OFF制御を実現することにより，不要なセル間干渉を抑圧し，システムスループットを増大できる.ユーザの動的移動を模擬した計算機シミュレーションにより,提案法は，周波数ブロック数が多いほど，さらにON/OFF制御の更新周期が短いほど効果が大きいが，歩行速度程度を考慮した環境であれば，10～100ms周期程度の更新周期で概ね良好な特性が得られることを示す.