TCP(Transmission Control Protocol)がインターネットのトランスポートプロトコルとして提案されてから,既に20年がたっている.その間,インターネットは急速に普及し,通信端末の性能も大幅に向上されている.そのようなネットワークを取り巻く環境の変化にTCPはうまく適応されてきて,現在ではインターネット全トラヒックの90%以上を占める電子メールやウェブ閲覧,ftpなどのサービスはTCPプロトコルによって支えられている.一方,携帯端末の普及や無線通信技術の発達に伴い,ワイヤレスネットワークの利用は爆発的な増加を見せている.無線通信は有線通信に比べ通信の帯域が狭く,遅延や誤り率が大きいという特徴がある.TCPは本来有線ネットワークを想定して設計されているため,ワイヤレスネットワークにおいて通信効率が著しく劣化する.この問題を解決するため,ワイヤレスネットワークにおいて様々なTCP方式が研究,考案されてきた.本稿では,こうしたワイヤレスネットワークにおいて取り込まれたTCPの研究に焦点を当てて,これまで提案されてきた手法をまとめて紹介するとともに,今後の方向性について分かりやすく述べる.
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