未使用アドレス空間を用いた明示的経路転送手法の提案

摘要

本論文では，IPを代表とするコネクションレス（CL）型パケット交換方式のネットワークにおいて，未使用アドレスをラベルとして用いることで，様々な粒度のパケットフローを明示的に指定した経路上に転送する手法を提案する．一般的にCL型パケット交換方式では，パケットに付加されたあて先アドレスをもとに次ホップが決定，中継され，あて先ホストに到達する．したがって，同一のあて先アドレスをもつが異なる性質をもつパケットフローをそれぞれ別の経路に通すことはできない．これを可能にする技術として異なる転送パラダイムをもとにしたMulti Protocol Label Switching（MPLS）技術があるが，移行には全ルータの転送方式を変更するためコストが高い．本研究では，特定のパケットフローをある未使用アドレスに割り当て，その未使用アドレスで明示的な経路を構成し，パケットのあて先アドレスの変換を行うことで，フローベースの明示的経路転送を行う手法を提案する．本手法では，転送方式は本質的に全く変えず，ルータに対する容易な拡張だけで明示的経路転送を実現する．適用方法によっては内部ルータの変更を必要とせず，既存ネットワークに対して容易に適用できる．本論文ではCL型パケット交換方式の代表例であるIPで実現する例を挙げ，本方式の特徴について論じる．