肺血栓塞栓症の分子病態

摘要

悪性腫瘍が静脈血栓塞栓症の危険因子であることはよく知られるところであり，その血栓形成についていくつかの機序が考えられている．単球やマクロファージから放出されるtumor necrosis factor（TNF），インターロイキン（IL）－1，6が内皮傷害を引き起こして血栓を生じる．腫瘍細胞とマクロフアージの相互作用により血小板，第Ⅶ因子，第Ⅹ因子を活性化し，ひいてはトロンビンや血栓の形成に繋がる．腫瘍細胞内の凝固促進因子であるシステインプロテアーゼや組織因子（TF）もまた血栓形成に寄与し，第Ⅶ因子や第Ⅹ因子を活性化する．