セキュリティネットワークを支える物理乱数生成技術III］ーレーザカオスを用いた超高速物理乱数生成器の最新動向―

摘要

高度情報化社会における情報セキュリティの要求が高まるにつれて，その要素技術である乱数生成器が重要な役割を演じつつある． 秘密鍵暗号や公開鍵暗号には乱数が不可欠であり，暗号の信頼性は乱数のランダム性に基づいている（本講座の第1，21,回参照）．また電子商取引においても情報の秘匿化，本人認証，ディジタル署名などに乱数が利用されており，用いる乱数の予測不可能性，非再現性，統計的均一性が情報セキュリティ上極めて重要な特性となる． 現在多く用いられている乱数は擬似乱数と呼ばれ，計算機内のアルゴリズムに基づき決定論的に生成される． 擬似乱数としては線形合同法やM 系列法，メルセンヌツイスターなどが知られており， 既に国際標準化も達成されている.擬似乱数はコンピュータへの実装が容であり，またコンピュータのクロック周波数オーダでの最大生成速度を実現できるという利点を有する， しかしながら擬似乱数を情報セキュリティへ応用する際には，盗聴者が擬似乱数生成器の初期値（シード）を推定することで乱数の予測が可能になるという致命的欠点を有している.