多段論理回路の論理最適化やソフトエラーに起因するパルスの伝搬解析において,可観測性ドントケア(ODC: Observability Don't Care)の集合が利用されることがある.効果的な論理最適化や正確なパルスの伝搬解析のためにはより大きなODCの集合が必要となるが,最大のODCの集合(MODC: the Maximum set of ODCs)の計算は回路規模の2乗に比例した手間がかかる.一方,ほぼ回路規模に比例した手間で計算できるMODCの部分集合として,両立可能な可観測性ドントケア·セットの集合(CODC: a set of Compatible sets of ODCs)がある.CODCは,論理ゲートの各入力に対して定められる優先順位に依存する.本稿では,回路規模に比例した手間で近似的なMODCを求める手法を提案する.本手法は,異なる優先順位のもとで複数のCODCを計算し,それらの和集合をMODCの近似とするものである.組合せ論理回路のソフトエラー率を求める実験において,近似的なMODCを用いて求めたソフトエラー率は厳密なソフトエラー率に対してわずか平均3.4%程度の過大見積もりであった.ただし,実行時間において提案手法には改善の必要がある.
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