アルミニウム合金板の成形性と最近の成形加工技術

摘要

アルミニウムは工業的に生産されるようになってからわずか100年あまりしか経過していない若い金属である。 国内のアルミニウム製品の総需要は約400万トン/年であり，その内訳は，約70％が板，押出形材などの展伸材，残りの約30％が鋳物，ダイカストなどとなっている。 アルミニウムは軽量で加工性や耐食性に優れた材料であるため，その板材は家庭用器物，各種キャップ頬，飲料缶，空調機用フィン等多くのプレス成形品に用いられている。 また，近年地球環境保護のニーズが高まっており，自動車ボディパネル用アルミニウム合金板は自動車の燃費向上やCO_2排出量低減を実現するための軽量化材料として大いに注目を集めている。 国内における自動車へのアルミニウム使用量は現在のところ平均100kg強/台であるが，そのうちの約80％ほエンジンおよびトランスミッションを中心とした鋳物が占めており，展伸材の使用量は少ない。 ボディパネル用アルミニウム合金板などの本格的な採用はまだこれからである。ここでは，まずアルミニウム板材全体の成形性を成形の区分に従って概観し，次に自動車ボディパネル用アルミニウム合金板に焦点を絞って，合金開発の経緯，特徴および成形性について述べる。最後に，最近の成形加工技術の代表例として，超塑性成形およびインクリメンタルフォーミングについて述べる。