楽曲の音楽的特徴を活用した新しいデータハイディング手法の提案

摘要

楽曲の音楽的特徴であるコード進行を活用した音楽データハイディング手法を提案する．音楽の三要素であるリズム，メロディ，ハーモニーのうち，ハーモニーを構成するコード進行に着目する．提案法では，楽曲のコードを構成する特定の周波数成分に対して秘密情報を埋め込む．この手法では，秘密情報を埋め込むことによって発生する音がシンセサイザなどの電子楽器で演奏されたものと同一視されるため，ステゴ楽曲が人間の聴覚により違和感なく認識されることが期待できる．本稿では，秘密情報の埋め込みおよび抽出方法を示し，提案手法の性能を秘密情報の抽出精度に関する計算機シミュレーション，およびステゴ信号の音質に関する主観評価実験を通して検証した．実験結果より，提案手法は楽曲として違和感なく成立し，かつ，100［bps］以上の伝送速度が達成可能であることが示された．また，白色ガウス雑音，MP3符号化，および遅延音付加などの攻撃を加え，攻撃耐性が高いことも確認した．