免疫性神経疾患治療の将来の展望

摘要

免疫性神経疾患における自己免疫の標的は，中枢あるいは末梢神経，さらに神経·筋接合部や筋肉など，いずれも特殊な機能を担っている組織であり，臓器特異的自己免疫疾患の範暗に属する．したがって，免疫性神経疾患治療の最終目標は，おのおのの疾患の標的組織に特有の抗原に対する免疫感作状態を解除することにある．このような抗原特異的免疫抑制療法を今世紀中に達成することは困難な状況であるが，近年の自己免疫動物モデルにおける分子レベルでの病態解明の成果に基づき，抗原の認識に関わる免疫反応のafferentlimbから，補体による一連の反応やサイトカインの放出によって標的を傷害するに至るefferent limbの経路を制御する方法が開発され，一部はヒトへの応用が実現しつつある．