等価変換に基づくCコンパイラテストシステムにおける制御文生成の強化

摘要

本稿では，テストプログラムの等価変換に基づくCコンパイラのランダムテストシステムにおいて，制御文の生成機能を強化する手法を提案する．コンパイラのランダムテストの方式は，差分法と期待値計算に基づく手法に大別される．前者は，文法に従って幅広い構文のプログラムを生成できる一方で，未定義動作の回避が課題になる．これに対し後者では，未定義動作を回避するようにプログラムを生成できるが，プログラム生成の際に構文木に加えて意味に関するデータ構造を構築する必要があるため，差分法に比べてプログラムが生成可能な文法の範囲が限定される．本稿では，後者のプログラム生成法において生成可能な制御文の種類を増やす手法を提案する．等価変換によるプログラム生成手法に基づき，従来から生成可能であったif文，for文に加えて，while文，switch文，関数呼び出しを含むプログラムを生成可能にする．このうち，while文，switch文は，差分法では生成が難しかったものである．本手法に基づくテストシステムをOrange4に追加実装して実験を行ったところ，GCC-4.4，GCC-4.8において従来の手法では検出できない不正コード生成を検出することができた．