大学の全国共同利用研究所における原子力教育－大学の共同実験教育

摘要

石油資源の枯渇が懸念され，原油価格が上昇している今日，現実的なエネルギー源として原子力の重要性が高まりつつあるにもかかわらず，わが国では大学における原子力の教育研究が危機的状況にある。 これは現行の軽水炉による原子力発電を中心としたわが国の原子力産業の成熟化に伴う就職市場の縮小と密に関係している。 他方，米国では原子力関係の求人率が長年の低迷期を脱して最近は飛躍的に高まっているとのことである。 わが国でも人材供給源としての大学の役割が再認識され，幾つかの新しい芽が生まれつつある。さて，筆者の所属する京都大学原子炉実験所（以下，「京大炉」という）は京大附置の研究所で，かつ全国大学の共同利用研究所である。 本稿では京大炉の取り組みを紹介しつつ，今後の大学における原子力教育について私見を述べることとしたい。