新世紀の上水道と浄水技術

摘要

わが国の水道法の本旨は，水道を普及するための責任と義務を規定するところにあり，今日の高普及率時代にあっては，その目的を達成したものと考えるべきであろう。 すなわち，21世紀を見通したとき，新しい概念のもとで水道と飲料水についての規範を求める段階にきていると考えている。 一方，世界の人口は21世紀なかばには100億人にまで加速度的に増加すると予測されている。 しかし，人の生活と深く関わっている淡水資源を考えるとき，その循環量は一定である。 人が人として生活する，必要最低限の水を確保できるかどうかが問われる世紀に入ろうとしているのである。 本稿では，このような21世紀を迎えて，上水道と浄水技術にはどのような課題が求められているのかを，①水質管理目標，②水処理技術，③水質評価技術，④水道システム管理，の4点から論述した。 また，開発途上国や新興工業発展国における上水道に関する基準や，規制を策定することへの支援を積極的に進めなければならないだろう。 わが国を含む工業先進国は開発途上国の多くに食糧を依存しているが，これは，地域的に偏在している水資源を形を変えて輸入していることに他ならず，世界の水資源と水循環に深く関わっているからである。