画像のサブバンド符号化に用いる多帯域分割SSKFの設計手法

摘要

本研究は，画像のサブバンド符号化に用いるフィルタバンクの一手法であるSSKF（Symmetric Short Kernel Filter）の設計手法に関するものである．この手法は，完全再構成と直線位相，双直交の条件を満たすフィルタを用いて，信号の周波数成分を複数の帯域に分割する方式である．本論文では，基本拡張行列を用いて，ブロック単位の直交変換を双直交のLBT（Lapped Biorthogonal Transform）に拡張し，その変換係数を帯域ごとに並べ換えることにより，任意のn個の帯域に分割するSSKFを構成する手法を提案する．具体的には，ブロックサイズが2のアダマール変換行列と，極めて単純な構造をもつ2種類の基本拡張行列を用いて，例えばのような任意の偶数タップをもつ2分割のSSKFを構成することができる．更に，ブロックサイズnの直交変換行列と，n種類の基本拡張行列を組み合わせることにより，完全再構成，直線位相，双直交の多帯域分割SSKFを構成する手法を提案する．更に，2分割SSKFの符号化効率について，標準画像を用いたシミュレーション実験を行い，入力信号をARモデルとみなした場合の符号化ゲインの結果と比較し，符号化効率を決定する要因について分析する．