構成要素を考慮した論文の分散表現に基づく類似論文検索

摘要

科学論文の出版数の急激な増加に伴い，関連研究を絞り込むための論文検索技術の需要が高まっている．その一例として，「目的は異なるが手法は似た論文」といった，構成要素（目的·手法·結果）に基づく類似論文検索が挙げられる．しかし，論文は完全に構成要素毎に構造化されていないため，どのように構成要素の情報を抽出し論文の表現に反映させるかが問題となる．また，どの観点で類似しているかアノテーションされたデータセットが存在せず，検索結果の人手評価にコストがかかる．本研究では，類似する理由が含まれた類似論文検索のためのデータセットを独自に作成し，人手を介さず自動評価が可能な新しい検索タスクを提案する．さらに，論文の構成要素を考慮するための，テキストと引用グラフの両方の情報を用いた論文のベクトル分散表現学習手法を提案する．自然言語処理分野の論文における列挙共引用予測を用いた評価実験の結果，既存の分散表現手法と比べ精度の向上を確認した．