衛星通信キャリヤ重畳方式における遅延測定方式の安定化

摘要

衛星キャリヤ重畳方式では通常干渉波のレプリカを生成しキャンセルする手法がとられる．本論文では衛星遅延測定を用いたレプリカ生成法に関して，そのかぎとなる低レベルの複合符号を用いる同期方式の安定化について述べる．遅延測定は複合符号の多値の相関値を判定して符号同期をとる手法を用いる．複合符号は同期時間の短縮に大きな効果を発揮するが，降雨減衰等による受信レベルの変動があった場合，判定誤りの増大によって同期遅延や同期破綻が発生する．この問題解決のために，符号同期系に補助ループを設け，それによって得られる入力レベルに比例する基準相関値によって多値の相関値を正規化することで入力レベル変動にも相関値が変化しない手法を提案し，遅延測定キャンセラ生成方式の同期系の安定化·強化を図った．更に，基準値の変動から正規化した相関値の等価SN比を評価し，積分時間など系の設計について検討した．計算機シミュレーションの結果，提案方式により秒単位のレベル変動に対応可能であることを明らかにした．