068 ー臨床:産婦人科 骨盤位患者の至陰に対して炭化棒灸を用いた検討 医療機関内での取り組みと症例集積

摘要

【目的】骨盤位矯正を目的とした灸療法は、以前と比較して認知度も高まっている。医療機関内で行っている報告も散見されているが、灸の煙やにおいは馴染みのない患者や他の医療従事者に不快感を生じさせる可能性が高い。このため、ファミール産院きみつ鍼灸外来では、煙とにおいが僅少の炭化棒灸を使用している。炭化棒灸は、灸による生体刺激の芳香作用を可能な限り排除しているため、既報と比較して骨盤位矯正への介入が奏功するか不透明であった。また、炭化棒灸を用いて骨盤位患者の至陰に介入した報告はまだ少ないため、灸療法の有効性を改めて示せる可能性を考えた。以下に1年間の症例集積結果を報告する。【方法】対象は、X年10月からX+1年9月に骨盤位矯正を目的にファミール産院きみつ鍼灸外来にて灸療法を受けた患者10例とした。Cardiniらの報告を基にして、左右の至陰に炭化棒灸を行った。分娩時胎位が頭位の者と骨盤位の者（以下、頭位と骨盤位）に分類した。さらに、頭位と骨盤位における初産婦、経産婦、年齢、初診時BMI、初診時収縮期血圧、初診時拡張期血圧、初診時妊娠週、治療回数を比較検討した。【結果】分娩時胎位は頭位6例、骨盤位4例であり、60の矯正成功率であった。初診時妊娠週は、頭位6例30.7±2.5、骨盤位4例34.8±0.8であり、有意差を認めた（p<0.05）。その他の項目は、有意差を認めなかった。【考察】既報に劣らない調査結果が得られたため、骨盤位矯正に関しては、灸の芳香作用が関与しない可能性が示唆された。当院当外来において、比較的煙とにおいのある棒灸を用いた際には、他の医療従事者からの勧告を日々受けていた。しかし、炭化棒灸を使用してからは他の医療従事者からの煙やにおいに関する勧告がなくなった。【結語】骨盤位患者の至陰に炭化棒灸を用いたところ、60の矯正成功率であった。医療機関内に適合する灸療法の一つの形を示すことができたと考える。