下痢?便秘診療の考え方

摘要

下痢?便秘に対して適切な治療を行うために,その発生機序や原因?疾患を理解すること は有用である。下痢の発生機序には,腸管腔内の浸透圧の上昇,腸管腔内への浸出液の増加,腸管腔内へ の水分の分泌過剰,腸管運動異常がある。急性下痢の原因は感染症が多く，慢性下痢の原因には，感染症や薬剤,吸収不良症候群， 膵機能低下,胆汁酸，好酸球性胃腸炎,食物アレルギーなど多種類ある。急性便秘の原因には腸閉塞や環境の変化などがあり,慢性便秘には器質性疾患,基礎疾患, 薬剤などの原因があるものもあれば,原因がわからないものもある。下痢や便秘といった便通異常を訴える入院患者は多 い。下痢や便秘を主訴として入院をした場合を除くと, 便通異常を引き起こす病態を考慮することなくその症状 に応じた対症療法が行われる場合が多い。しかし 患者 の病態やその症状の背景を理解することは,より適切な 治療法?治療薬の選択につながると考えられる。ここで は,病態を考慮した下痢?便秘診療の進め方について解 説する。