末梢神経の連続電気パルス刺激におけるシナプス効果に関する一検討

摘要

近年，神経科学の研究分野において末梢神経系を選択的に刺激することに関心が高まっている．刺激方法の一つとして，表皮内電気刺激（IES）がある．IESとは，皮膚にごくわずかに刺した電極から微弱な電流を流すことで，表皮内の神経を選択的に刺激する方法である．筆者らの研究グループでは，電磁界解析と神経モデルを組み合わせ，単一パルスによる刺激実験と比較検討することで，Aδ-fiberの神経モデルを構築し，神経レベルでのIESの効果を評価した．しかしながら，痛覚の認識には，複数の神経による反応が時間的·空間的に統合されていると考えられており，複数の反応を統合するシナプスが関係する連続パルスの神経刺激による効果をモデル化した例はほとんどない．本研究では，連続パルスに対する複数の神経応答を模擬するシナプスモデルを追加することで，Aδ-fiberの神経モデルを拡張した．拡張を行ったモデルによる解析結果は，刺激回数を一定の周波数で変化させた場合，刺激回数5回以降で痛覚閾値が収束し，実験結果と一致した．今後，周波数による影響などの刺激条件による影響を調べるためには，シナプスモデルの拡張を行う必要がある．