特集2にあたって:備えあれば憂いなし!災害時の初動を整理しょう

摘要

わが国においては,阪神淡路大震災以降,災害医療の体制整備が進み,医療チームの派遣体制の整備や，情報共有システムの整備,災害拠点病院の整備,地域医療機関の災害対応力の向上，地域における医薬品供給体制の整備など，さまざまな取り組みがなされており,急激な変化を遂げています。薬剤師は,災害時における,医薬品供給体制の整備や,公衆衛生，感染症対策など,多くの場面で活躍することが望まれています。薬剤師の災害対応においては,被災地域で勤務する薬剤師としての対応，被災地外より支援に入る薬剤師,被災地域で取り組みが始まっている薬事コーディネーターとしての対応などがあり,より多くの薬剤師が関わる必要があります。また,厚生労働省も災害時における薬剤師の対応体制整備事業などの取り組みを行っており，2022年7月22日付で厚生労働省から都道府県知事宛に,大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制整備について通知がなされ，そのなかに保健医療福祉調整本部の構成員として薬事コーディネーターが明示されるようになりました。今後,都道府県での医療計画や地域防災計画にも反映されるようになっていくことが考えられます。薬事コーディネーターの整備事業や,支援薬剤師の派遣体制,地域における医薬品供給体制などの制度や計画を作り上げていくだけでなく,薬事コーディネーターの育成教育や技能維持，支援薬剤師の基礎的な知識の統一化,災害大国である日本におけるすべての医療者,薬剤師に向けた基本的な教育体制の確立など課題も多くあるかと思います。