医療領域における次世代型「臨床薬理学教育」への提案 —疾患から薬物を選択し学習する—

摘要

「薬理学」は,近年多くの分野に特化し,多岐にわたる 研究分野や臨床領域に基づいた専門領域や内容を示す名称が冠せられた「薬理学」が用いられている.薬物を扱う機 会が最も多い医療関連従事者に必須の学問であり, 医療現場及びその教育分野では,しばしば「臨床薬理学（薬物治療学）」という名称が用いられている. 薬理学教育における「臨床薬理学（薬物治療学）」の役割は，臨床現場の様々な医療行為に対して直接?間接的に薬物の持つ効果?作用を用いて，患者の疾患やそれらの様々な状態に応じた薬物を分類?選択して適用したり，その用法（量の増減，適用時間?間隔など）や副作用等を学ぶことにより，臨床現場での薬物療法に役立てようとするものである.従って,薬物を多面的に論ずる薬理学及び薬理学教育の分野においては,臨床薬理学で採り上げる疾病や薬物の選択が重要で不可欠である（尾崎他,2022）と考える. しかし,疾患及びその対応医薬品は，様々で多数存在するため,それらの分類?選択は困難である. そのため,本報では臨床薬理学の教育?学習にあたり, 採り上げる疾患と薬物を「薬物から疾患」と「疾患から薬 物」の二つの観点に基づき,臨床薬理学で扱う疾患と薬物を分類?選択する方法及び教育効果?能率を高めるための教育?学習法の構成について提案する.