I. メルケル細胞癌一治療の現状と未来,薬物 療法を中心にー

摘要

メルケル細胞癌は高齢者の頭頸部に好発する皮膚原発 の神経内分泌腫瘍である。その発症にメルケル細胞ポリ オーマウィルス(Merkel cell polyomavirus: MCPyV)が 関与するウィルス陽性例とそうでないウィルス陰性例に 大きく二分され,前者はMCPyVによるウィルス発癌， 後者は慢性紫外線曝露によるDNA損傷が関与した紫外 線発癌による。まれな疾患ではあるものの近年明らかな 増加傾向にあり，日常診療において遭遇する可能性は 徐々に増えてきている。悪性度の高い疾患であり，遠隔 転移がなければ外科的切除が原則とされているものの, 高率に局所再発やリンパ節転移,遠隔転移を来し,がん 薬物療法の適応として免疫療法を行う頻度も少なくな い。現在，本邦において皮膚がんに対し免疫チェックポ イント阻害薬が承認されているのはメルケル細胞癌とメ ラノーマのみであり，メルケル細胞癌に保険適用のある 薬剤はアベルマブのみである。本稿では，メルケル細胞 癌治療の現状に関して薬物療法を中心に概説するととも に，今後の展望も述べる。