脳死全肝移植ドナー手術

摘要

脳死固形臓器移植は,ドナー体内にて血流をシャットダウンし「仮死状態」となった臓器をレシピエント体内で「蘇生」させる術式である.移植肝が速やかに機能するために,また術後虚血性胆管炎などの合併症を起こさないために，「臓器を蘇生させる」というコンセプトを常に念頭に置く必要がある.そのためには,循環動態に大きな影響を与えないこと，保存液の灌流が十分であること，また臓器からの脱血不良がないことなど，通常の手術とは異なる視点が必要となる.また，クロスクランプの後には，血流がなくなった真っ白な術野で剪刀で鋭的剝離を繰り返す「cold dissec-tion」と呼ばれる特殊な手技を行う必要がある.本稿では，摘出手技に加え，臓器保存の観点から必要な事項を解説する.開腹?大動脈カニュレーション?クロスクランプまでの「warm dissection」,クロスクランプ後の血流停止した後の「cold dissection」に分け解説する.