がん幹細胞を標的とした経口杭癌剤の開発

摘要

膠芽腫は脳の正常部位に浸潤するため，完全摘出 が極めて困難である。膠芽腫の根治療法を確立す るには，新たな化学療法剤の開発が望まれている。 がんの発生かつ治療抵抗性の根源として，がん幹 細胞の存在が提唱されている。本研究では，手術 で摘出された膠芽腫の組織から，がん幹細胞を樹 立し，新たな分子標的になり得るイオンチャネル を発見した。イオンチャネルタンパク質の薬剤結 合領域に対してドッキング計算を行った。既存薬 を教師学習させ，仮想化合物ライブラリ一からス クリーニングを行った。新規の仮想化合物を実際 に合成し，細胞増殖抑制活性を有する新有効成分 を創り出した。膠芽腫モデルマウスを作製し，被 験薬を5日間連続で経口投与し，有効性を全生存 期間で評価した。その結果，新有効成分は生存日 数をプラセボ群より有意に延長させた。本研究は， この新有効成分を応用する'ことにより，イオン輸 送を標的とした新しい作用機序を持つ経口抗癌剤 を提供できる可能性を示唆する。