2015年のパリ協定合意後，国際的な温暖化対策は加速している．日本政府は2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を気候変動枠組条約事務局に提出し，2050年までに温室効果ガス排出量の80削減および，21世紀後半の早い時期での脱炭素を打ち出した．国家だけではなくビジネスや地方自治体なども長期の地球温暖化対策を打ち出している．例えば2019年12月に東京都は「ゼロエミッション東京戦略」を策定した．日本経済団体連合会も脱炭素に向けた企業活動を後押しする取り組み「チャレンジ·ゼロ」を始めている．こうした長期的な地球温暖化緩和策やエネルギー政策を考えるにあたって，定量的なシナリオ分析は標準的な分析枠組みである．実に多様な分析が行われ，政府の政策立案やビジネスの経営戦略立案に役立てられている．世界を見渡せは国際エネルギー機関（International Energy Agency, IEA）が毎年公表する世界エネルギー展望では現状維持のStated Policies Scenario（STEPS）やパリ協定の2℃目標と持続可能な開発目標に整合的なSustainable Development Scenarioなどが公表されている．気候変動に関する政府間パネル（Intergovernmental Panel on Climate Change, IPCC）の報告書では多数の研究チームによるシナリオ分析を包括的にまとめ，報告書に反映すると同時にオンラインのデータベースを公表している．日本でも政府では長期エネルギー需給見通しが作成され，更に多くの研究機関のシナリオ分析が行われている．
展开▼
