DNAを用いた個人識別—DNA型鑑定と法遺伝学の今とこれから

摘要

犯罪捜査や災害時の身元確認等で活用されるDNA型鑑定は，個人識別において特に有用であり，実施 件数も非常に多い。DNA型鑑定を扱う学問分野は法科学，法生物学，法遺伝学等とよばれるが，あま り馴染みのある言葉ではないと思う。本稿では，DNA型鑑定とその学問分野における研究について概 説する。DNA型鑑定等の科学捜査に関する技術を支え る学問は，法科学とよばれる。これはforensic scienceの日本語訳であり，forensicには「法廷 の」という意味がある。法科学に含まれる分野は 生物学，化学，工学，心理学等とさまざまであり, それらは頭に「法」を付けて「法生物学（forensic biology)」等とよばれる。今回の連載では，法生 物学に関するテーマを取り上げていく（5回連載 予定)。