職業性胆管癌再発に対し二ボルマブで 完全寛解後長期 間 durable response が認められた1例

摘要

職業性胆管癌は,塩素系有機溶剤の高濃度?長期曝露による化学発癌である.広範囲の肝内外胆管に慢性胆管傷害,前癌病変(胆管上皮層内腫瘍および胆管内乳頭状腫瘍)が認められ,同 部ではDNA損傷が引き起こされている.通常の胆管癌の約30倍に相当する高い腫瘍遺伝子変異量を有し,胆管癌でPD-L1の発現が確認されている.2012年,大阪の印刷事業場において高濃度のジクロロメタン(dichloromethane : DCM),1,2ージク ロ ロプロパン(1,2-dichloropropane : DCP)あるいはその両溶剤の曝露が要因と考えられた胆管癌が集団発生 した事例が報告された.2013年10月にこれらの塩 素系有機溶剤の長期間曝露による胆管癌が労災疾病と 認定され,この胆管癌が「職業性胆管癌」と認識され るようになった,職業性胆管癌の臨床病理学的および分子生物学的特徴は通常の胆管癌と異なる点が多い.そこで本稿では,職業性胆管癌の概要を解説したのち, 術後切除不能再発に対し二ボルマブ投与により完全寛 解(CR)が得られた症例を報告する.