顔面非対称症例に対して輪郭形態を考慮して顎矯正手術を行った1例

摘要

顔面非対称を呈する患者は咬合平面の傾斜やオトガイ部の偏位だけでなく,外耳道や眼窩など中顔面の位置異常を呈することがある。治療計画を立案するうえで,どこを基準とするかについての指標はないため,手術方法の選択に難渋することも多い。主に下顔面の非対称が輪郭に影響するため,上下顎移動術により上下顎を一塊として非偏位側に回転するか,下顎骨単独手術で顔貌の不調和を補正することとなる。今回我々は,顔面非対称を伴う骨格性下顎前突症に対して,下顎枝矢状分割術による後方への回転移動と同時に偏位側の輪郭形成を行い，良好な結果を得た。患者は下顎の右方偏位による顔貌の非対称感と咬合不全を自覚し，矯正歯科医院を受診した。矯正歯科医より顎矯正手術が必要と判断され，当科を紹介受診した。下顎右方偏位を伴う顔面非対称および骨格性下顎前突症と診断し,術前矯正治療終了後に下顎枝矢状分割術と偏位側の輪郭形 成術を施行した。術後2年9か月経過した現在も良好な咬合と輪郭が維持されている。