アブラコウモリの内的状態へのアプローチ：下丘誘発電位および心電図計測

摘要

コウモリのエコーロケーション行動は周囲の状況に応じて柔軟に変化しており，適応的なナビゲーション戦略の解明が生物学的·工学的な面から期待されている．しかしながら，この適応的なナビゲーションを支える意思決定の過程に影響を与えうる感情や欲求といった内的要因の定量評価は難しい．そこで本研究では，コウモリの内的状態を定量評価する指標として，脳幹下丘における誘発電位および心電図に着目し，これらを同時計測するシステムを確立した．トーンピップを用いた聴覚オドボール課題によってコウモリの生理学的な反応について基礎的な検討をおこない，また，コウモリにとって身近な環境音である同種のエコーロケーションパルスを聴覚刺激として用いることによって，高度なナビゲーションを支える意思決定基盤に神経行動学的にアプローチした．