Make Do With Now ： New Directions in Japanese Architecture

摘要

日本の建築の美しさをアピールしない海外での展 示は珍しい. なぜそれが可能だったのか. スイス 建築博物館(S AM)による，広く聴衆に伝える物語 づくりの巧さの妙だろう. S AMはバーゼルの建築関係者によって設立され た企画展示を軸とする私設の機関で，現在の館長 はアンドレアス·ルビー. 出版社ルビ一·プレスの 主宰もする彼は，一般の人びとに建築や都市につ いて伝えることを得意とし，来場者数が低迷してい たS AMに就任すると，専門外の人にも分かりや すい展示に切り変えた. S AMのチームメンバーで あり今回のキュレーターの篠原祐馬さんはその立 役者のひとり. 2011年東日本大震災以降に活躍を 始めた日本の若手建築家を集めた今回の展示に 『Make Do with (やりくりする）Now』というキャッ チーなタイトルを付けた. 日本の建築と言えば， 自由で革新的という，ヨーロッパの人びとの期待を 裏切り，展示されるのはつつましやかなプロジェク トたちだ. 改修，セルフビルド，ありふれた素材や 納まりの転用，環境問題への対処などのアプロー チはョーロッパでもなじみが深く，多様な出展者た ちにもかかわらず，まとまった印象を与える. 伝統 的にも現代的にも独自の文化を持った日本の建築 を，共通する社会問題やその取り組みに焦点を当 てることによってぐっと聴衆の身近に引き寄せる， そんな展示だった.