GVHDの予防と治療の新たな展開

摘要

急性GVHDは,ドナーグラフトに含まれる成熟T細胞が,ホストおよびドナーの抗原提示細胞により異常活性化し正常組織を攻撃する全身反応であり,これによる損傷が組織寛容の闘値を超えるときに臨床的に発症する。さらに，この急性期免疫反応による造血器官および非造血器官の機能損傷は,この後の慢性GVHD発症の病態基盤となる。現在,移植のエンドポイントが,急性期の安全な生存から,後年までQOLが保持された豊かな人生へ大きくシフトチェンジする中で，急性期から慢性期にかけてシームレスなきめ細かい免疫管理が求められる。これまで,カルシニューリン阻害薬と短期MTXによる予防法が長く使用されてきたが，近年のドナーソースの多様化や治療目標の変化を背景に，様々な新規免疫制御法が臨床や研究の現場から考案され,開発中である。本稿では,急性GVHDと慢性GVHDにおける最近の基礎?臨床研究の展開を紹介する。