関西モダニズム——住宅，建築，都市——第5回再編される都市，住宅

摘要

1920年代は日本の都市制度が一新される時代だった.19世紀末から20世紀 の初頭，東京と大阪において，産業革命に成功したことによる都市問題が惹起 する.公害の発生，都市への人口流入がもたらす過密居住と住宅不足，工場 とその労働者住宅の叢生による近郊の蚕食という事態が起きる.さらにサラ リーマン層において職場と居住が分離し，東京であれば代々木，大久保など山 手線沿線に郊外住宅地としう新しい生活空間が生まれる. 「大大阪」を実現させたイデアのひとつは，周辺地域が都市化していく状況へ の危機意識である.1910年代に入ると「郊外の空地は潮の如き勢いを以て， 人家と工場を以て墳充せらるる」状況となっていた.ここにおいて市部と周辺 地域とは「統一的一体として同一自治体の支配の下に置かなければ，今後の発 展を期することが出来ない情勢」と判断したのである~*1.文字面だけ見ると血 の通わない役所の作文であるが，その裏側には，社会が都市計画法を理解し なしにとに対して関が懐いていた不満の感情があった.その主著『住宅問題と 都市計画』。お3年)の中で，法律の「大目的が住み心地のよき都市を建設する ことに……ほとんど了解がない」と世論に憤り，「五大強国のーに列する意気は 何処に在りや」と慨嘆していた".関は分散都市論者であり，郊外居住を推進 しょうとしていた.その手段として通勤に供する高速度交通機関を設置して「宅 地の供給を増加し，地代引下」をもたらすことを目指した.そのためには周辺 地域を都心部と同ーの行政体の下に置きたかったのである.