名古屋市における熱中症搬送人員数予測式の検討

摘要

近年，熱中症搬送者数は増加傾向にあり，社会問題となっている．熱中症は，体内における熱バランスの崩れや脱水症状が要因となり発症する．そのため，生体の暑さ慣れや，数日間暑い日が続いた際の影響である熱の累積効果などを考慮し，外気温などの熱ストレスが人体に与えるリスクを定量的に評価することが重要となる．現在，熱中症リスク評価指標として暑さ指数WBGTが用いられているが，WBGTでは，暑さ慣れや熱の累積効果といった人体の生理応答や年齢による相違を考慮できていない．そこで本稿では，暑さ慣れや熱の累積効果を考慮した熱中症搬送人員数予測式を提案した．その結果，屋内での発症した患者数の予測は，連続する2，3日間の気象条件を入力した場合に精度が高く，屋外での患者数の予測は，当日の気象条件のみで精度よく予測できることがわかった．また，RNN（Recurrent Neural Network）モデルを用いた機械学習による予測も合わせて行うことにより，高精度な熱中症搬送者予測システムを構築し，救急搬送の事前準備に貢献することを目的とする．